夢と現実の狭間に揺れながらその孤独な魂は
導かれるように聖地<グレイスランド>に向かった―

精密金型工場で働きながら、夜はエルヴィス・プレスリーのトリビュート・アーティストとしてステージに立っているカルロス。エルヴィスの生まれ変わりであると信じる彼は、服装から乗る車、食べるものに至るまで、本物のエルヴィスとそっくり同じものを身につけて生活をしている。更には周囲の人間に自らを「エルヴィス」と呼ぶことを強要し、娘にはエルヴィスの娘と同じリサ・マリーと名付ける程の徹底ぶりに、かつて愛したはずの妻は愛想をつかし、娘を連れて別居してしまう。そんな中、ある予期せぬ出来事からカルロスは娘の面倒を見ることになるのだが、次第に父親としての自覚が芽生え始めていく。しかし、彼には絶対に叶えなくてはならない、あるひとつの夢があった。やがて妻と最愛の娘を残し、彼はエルヴィスに導かれるように聖地<グレイスランド>へと向かうのであった―

"エルヴィスの歌声に最も近い男" ジョン・マキナニーの熱演!
「BIUTIFUL ビューティフル」「バードマン」の共同脚本、アルマンド・ボー長編初監督作!

主人公カルロスを演じるのは、アルゼンチンでエルヴィスのトリビュート・アーティストとして、実際に活躍するジョン・マキナニー。本作が映画初出演だが、吹替えなしの圧倒的なライブシーンをはじめ、体型や容姿、その歌声まで、エルヴィスにそっくりな彼にしかできない役柄を見事に演じきった。
そんな彼から物語の着想を得て、本作を作り上げたのは、第88回アカデミー賞でも『レヴェナント 蘇えりし者』で2年連続となる監督賞を受賞し話題となったアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『BIUTIFUL ビューティフル』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で共同脚本を務めたアルマンド・ボー。類まれな純粋さをもった、しかし不器用なひとりの男の魂の彷徨を、リアリティ溢れる演出とカメラワークで描いてみせた。監督デビュー作ながらも本作は高く評価され、国内外の映画祭で数々の賞を受賞し大きな脚光を浴びることとなった。 この映画を観終えたものは、夢を追いかけ続けることの厳しさと美しさを同時に感じずにはいられないだろう。

アルマンド・ボー 監督・脚本・編集・制作
Directed by / Written by / Edited by / Produced by Armando Bo

アルマンド・ボーは1978年ブエノスアイレスに生まれ、17歳頃から映画と広告業界で働き始め、ニューヨークのいくつかの有名学校とブエノスアイレスのファインアーツミュージアムで映画制作を学んだ。
父親のビクトル・ボーは俳優兼プロデューサーであり、祖父は1930年代のアルゼンチン映画界でトップ・スターだった俳優兼監督のアルマンド・ボーである。
2005年、ボーがパトリシオ・アルバレスと共に始めた「Rebolucion」というコマーシャル製作会社はイベロアメリカで有数の制作会社となり、彼は世界で最も優秀な広告ディレクターの一人となった。
彼は広告ディレクターとして50もの国際的な賞を受賞している。
2009年、彼はアレハンドロ・G・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネと共に『BIUTIFUL ビューティフル』を共同執筆し、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
そして2014年にはイニャリトゥ監督らと共に再び脚本家として「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に携わり、この作品はアカデミー賞脚本賞を含む4部門を受賞する結果となった。

「エルヴィス、我が心の歌」は他人の人生を模倣しながら生きている男の物語です。
彼は、自分自身をエルヴィス・プレスリーだと信じており、それが家族、特に娘に強い影響を与えています。この映画はアイデンティティの喪失、自己否定、狂信のメタファーなのです。
これらのテーマは私がとても興味をもっている事柄であり、特に若い人たちの間に多く見受けられることだと考えています。現在、アイドルは偶像化され、まるで完璧な人間であるかのように売り出されていますが、実際は我々同様不完全な人間なのです。
この映画で、主人公カルロスは非常に歌が上手いという才能を持っていますが、自分のパーソナリティを持っていない為に、他の人間を真似ることを選びます。人は皆、ある意味誰かの代わりなのでしょう。
本作は、エルヴィスの音楽を、エルヴィスとは関係ない南米の現実と融合させることで異なる音を奏で、異なる雰囲気を持たせた映画です。この映画によって私は、カルロスの狂気、そして彼が求めていた夢を掴み取ろうとしている姿を視覚的に表現できたと思っています。

[ 受賞歴 ]

2012年 アルゼンチン・アカデミー賞《主演男優賞・美術賞・メイキャップ&ヘア賞・撮影賞・オリジナル音楽賞・録音賞》6部門受賞
2012年 サンセバスチャン国際映画祭《ホライズンズ・ラティーノ部門最優秀作品賞》受賞
2012年 チューリッヒ映画祭《最優秀初監督賞》受賞
2013年 ソフィア国際映画祭《審査員特別賞》《ヤング審査員賞》2部門受賞
2013年 リェイダ・ラテンアメリカ映画祭《観客賞》受賞
2013年 アルゼンチン映画批評家協会《新人男優賞》《オリジナル脚本賞》《美術賞》《音楽賞》4部門受賞

「エルヴィス、我が心の歌」

2012年 / アルゼンチン / スペイン語・英語 / カラー・シネスコ / 91分 / 原題:El último Elvis / 英題:The Last Elvis

スタッフ

監督・・・・アルマンド・ボー
脚本・・・・アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ
撮影・・・・ハビエル・フリア
製作・・・・ビクトル・ボー、アルマンド・ボー
制作補・・・アレハンドロ・G・イニャリトゥ

キャスト

ジョン・マキナニー ・・・・・・エルヴィス/カルロス・グティエレス
グリセルダ・シチリアニ ・・・・アレハンドラ・オレンベルグ
マルガリータ・ロペス ・・・・・リサ・マリー・グティエレス

川口敦子 | 映画評論家

“Imitation of Life”人生の幻影に、はたまた模倣の人生に自分を重ねて――というのは銀幕の前の私たちにもいかにも覚えのあることで、
だから他人事ではない主人公カルロスの姿にまずじわじわと巻き込まれる。
それが黄昏色の温かな懐かしさの中でゆっくりと醗酵していくような狂気の物語となっていく時、今度は彼のアイドル/エルヴィスその人の生の真実がしっくりと融けだしてきて、
そんなふうに人生の奥行を、悲しさをすらりと物語りする新鋭監督の腕に唸る。
もひとつ苦手なイニャリトウ作品の脚本を手掛けてきたと聞いて、ちょっと身構えたり、しり込みしたりしたのが余計な心配と納得できて、
もう一度、監督の業にうれしい驚きを噛みしめました。

桐生大輔 | エルヴィス・プレスリー トリビュートアーティスト

同じエルヴィスのトリビュートアーティストとして、エルヴィスを命懸けで愛し、歌う姿に激しく共感したと共に、人間味溢れる愛のあるストーリーに感動しました。
また、映画に出てくる名前、車、メンフィスの景色などエルヴィスファンには堪らないアイテムがたくさん登場するのも本作の見どころです。
エルヴィスを知るとその人の人生も変わってしまう、私もその1人ですが、何者にも変えがたい魅力と個性を持ったエルヴィス・プレスリーという人物を、
この映画をきっかけに知って頂く方が増えればと期待します。

サエキけんぞう | 作詞家・アーティスト

エルヴィス? 世界中に恐らく何百人いるかもしれない「俺もエルヴィス」や「俺がエルヴィス」。
その屈折したロックンロール・オタク心情の最深部に切り込むほろ苦くも切ない物語は人ごとではない。
我々と同じ目線から、より鋭い視点を提供するロック映画だ。
エルヴィスの聖地グレイスランドでのロケも敢行し、これほど心に深くエルヴィス・プレスリーの1曲が胸に刺さる作品は今後も生まれないだろう。

ヴィヴィアン佐藤 | 美術家

かつて原型があり、それを模して反復してしまうという性。
「似ている」ということは、決して「同じ」ではないということ。
パックスアメリカの象徴とも言うべくエルヴィス・プレスリー。
アメリカ型の消費資本主義社会という亡霊が蔓延していた20世紀。いまやその亡霊すら亡霊化してしまった。
「エルヴィス・プレスリー」という固有名と楽曲と歌詞は、多くの人々に郷愁にも似た感情を呼び起こす。
『エルヴィス、我が心の歌』は、カルロスというたった一人の男の人生を通して、エルヴィスの名曲が鏤められたまったく新しい形のミュージカルだ。
これはカルロスの冥府への旅路の物語であると同時に、知らず知らずに死に至る快楽を我々に投与する危険性を孕むデカンダンスな作品でもある。
しかし、そこにはとてつもなく崇高な尊厳が確かに横たわっている。

山崎春美 | バンドマン・作家

そもそもトリビュートったってフェイクに過ぎない。
そうやや勘違いしていたボクはこの映画にこっぴどくもしっぺ返しを食らっちまった!
主人公の強烈なニヒリズムは本音をエルヴィスとしてしか語らないのだが、反面、表裏一体化した彼のその喜怒哀楽に富む「生きかた」には鬼気迫る何かがある。
はじまってすぐに気づくこの魅惑の正体は、でも一体なんなんだ。同時代性と言うべきか。
この春、知る人ぞ知る異色漫画家・根本敬が165枚の名盤ジャケットを発注制作にて描き直した画集が出たのだが、そしてプレスリーのレコードは元より、
エルヴィスの大ファンだった作家の深沢七郎によるギターのアルバムもそこには入っていて、いったいリスペクトとはなにか。
かくも成熟市場と化した現代にあって表現営為とはなにか。それをこそ思い知らされ、突きつけられるのである。
いと(も)摩訶不思議にも問題を見事に提起する本作を堪能するのに、しかしエルヴィスの知識はいらない。
流れる音楽はそれそのものとして愉しめるし、なによりまず観客であるあなた自身がいつのまにか問われてしまうという、
これまた異色の、ただしあくまでも一流の娯楽作品に仕上がってもいる。
是が非とも劇場でご賞味あれ。願わくばロックの真のスピリッツを、甦らせ給え!

湯川れい子 | 音楽評論家・作詞家

エルヴィスへの愛にあふれた歌心が、何故ここまで人の心を打つのか・・・
地味だけど素晴らしい映画だと思います。
そして、何といっても主演のジョン・マキナニーが笑顔の可愛い人で、すっかり彼の演技に魅せられてしまいました。

若木康輔 | ライター・構成作家

ショーで歌う1曲目が「シー・シー・ライダー」だと言えば本格ファンも身を乗り出す、映画の、主人公カルロスの、晩年エルヴィスなりきりディティールのこだわり。
しかしエルヴィスは〈超人バードマン〉じゃない。生身の人間だった。カルロスはそこに、どう折り合いをつけるのか。
監督のアルマンド・ボーがただ一度だけそっと見せる、シュールな演出がある。
込められたホロ苦い優しさにぜひ注意してみてほしい。
これは映画を、音楽を愛してしまった者みんなの物語だ。
僕らも多かれ少なかれカルロスのように、現実世界より美しい場所を見つけた不幸を背負いながら生きている。

エリア 都市名 劇場名 公開日
関東 渋谷区 ユーロスペース 上映終了
  立川市 立川シネマシティ 上映終了
  横浜市 シネマ・ジャック&ベティ 上映終了
中部・北陸 名古屋市 名演小劇場 上映終了
関西 大阪市 シネ・リーブル梅田 上映終了
  京都市 京都みなみ会館 上映終了
  神戸市 神戸国際松竹 上映終了
九州・沖縄 福岡市 KBCシネマ 上映終了